位牌の文字入れ・戒名入れの手法と注意点

位牌の文字入れ・戒名入れの手法と注意点 位牌について

「故人そのもの」として、仏壇に大切にお祀りされる位牌。位牌をつくるときは、戒名や没年月日などの文字入れを行います。

なお、位牌に戒名などの文字入れをするときは、いくつかのルールを押さえておく必要があります。今回は、東京浅草にある滝田商店が位牌の文字入れに関する基本的な知識を解説していきます。

戒名とは

戒名とは、仏の弟子になったことをあらわす名前です。仏の世界(あの世)における故人の新しい名前を授けることで、迷わずに極楽浄土へ行けると考えられています。戒名に対して、俗世間での名前を「俗名」と呼びます。

もともと戒名は、出家して仏門に入り、守らなければならない戒律を受け入れた弟子に与えられる名前でした。

しかし、現在では故人をたたえ、仏弟子として浄土へ往生するために、菩提寺の住職から戒名を授けてもらいます。菩提寺のない方は、葬儀を取り仕切る僧侶に授けてもらうことが一般的です。

本来の戒名は2文字のみで構成されており、そこに院号や道号、位号などが加わって全体で6〜11文字程度の名前となります。戒名というときは、長い名前全体を指すことが一般的です。

戒名の基本構成

法名・法号

浄土真宗では、戒名ではなく「法名」といいます。他の宗派では授戒の作法で授かるので戒名といいますが、浄土真宗では戒を受けないため、仏弟子として法名と呼ぶことになっているのです。

日蓮宗では戒名と呼んでも差し支えありませんが、授戒をあまり行なっていないので、「法号」と呼ぶこともあります。

道号

道号は、二文字の戒名の上につけられるもう一つの名前で、号とか字(あざな)にあたるものです。

道号は本来、かつて中国で用いられた仏道を修得した特別な人に対する尊称です。道号は中国に生まれ、日本に伝わってから二文字の戒名の上につけられるようになりました。

位号

位号は、戒名の下につけられる尊称です。仏教徒としての位をあらわし、性別や年齢、地位によって異なります。

位の高い順に、大居士・清大姉、居士・大姉、禅定門・禅定尼、清信士・清信女、信士・信女となります。子どもは、童子・童女、孩子・孩女、嬰子・嬰女です。

冠字・上文字・置字・梵字

白木の位牌に書かれる文字には、本来の戒名の他に冠字や上文字、置字、梵字などがあります。

宗派によって異なりますが、「冠字」とは戒名の上にある「空」「妙法」「法名」などの文字です。上文字は「新円寂」「新帰元」「遷化」などで、どちらも戒名を構成する文字ではありません。

置字は戒名の下にある「霊位」「位」などで、これも戒名ではありません。梵字は、それぞれの宗派の本尊をあらわしています。

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位牌への戒名の入れ方

位牌への戒名の入れ方は、状況によって違ってきます。

ここでは、戒名を位牌に入れるときのポイントをみていきましょう。

位牌に入れる文字

位牌には、次の4つの要素を文字入れします。

  • 戒名
  • 没年月日
  • 俗名
  • 行年(享年)

俗名(ぞくみょう)とは生前の名前で、行年(ぎょうねん)とは亡くなったときの年齢です。享年(きょうねん)ともいいます。

基本的には、白木の位牌に書かれている内容をそのまま本位牌に書き写すことになりますが、本位牌には入れないルールになっている文字もあります。入れる文字に関するルールは地域やお寺によって異なるので、悩んだときは戒名を授かった菩提寺に確認するとよいでしょう。

お一人の戒名を入れる場合

真言宗以外の宗派では、次の図のように入れるのが一般的です。没年月日を裏面に入れる場合もあります。

ご夫婦の戒名を入れる場合

ご夫婦の場合は、1つの位牌に一緒に戒名を入れることができます。もちろん、お一人ずつ位牌をつくっても問題ありません。

真言宗以外の宗派では、次の図のように入れるのが一般的です。没年月日を裏面に入れる場合もあります。

先祖代々の文字を入れる場合

先祖代々の位牌は、1つの位牌でご先祖様をお祀りするものです。スペースの問題などでご先祖様の位牌をすべて仏壇に安置することが難しいときは、先祖代々の位牌をつくることがあります。

先祖代々の文字を入れる場合、次の図のように文字入れをするのが一般的です。

戒名がない場合

無宗教などの理由で戒名がない場合は、一般に「○○○○之霊位」というように生前の名前を表面に記入します。裏面の俗名は省き、没年月日と行年(享年)は同じように記入します。

大人と子どもの戒名における違い

大人と子どもでは、表のように戒名に違いがあります。

大人子ども
男性・□□△△信士
・□□△△居士
・○○院□□△△居士
・○○院殿□□△△大居士
・△△嬰子(~1歳)
・△△孩子(2~4歳)
・△△童子(~15歳)
女性・□□△△信女
・□□△△大姉
・○○院□□△△大姉
・○○院殿□□△△清大姉
・△△嬰女(~1歳)
・△△孩女(2~4歳)
・△△童女(~15歳)

○○が院号、□□が道号、△△が本来の戒名を指します。

戒名の文字の注意点

位牌に文字を入れるときは、いくつか注意したいポイントがあります。

ここでは、文字入れの際に知っておきたい知識を解説します。

戒名の旧字

戒名には、旧字(昔の漢字)が使われることもあります。基本的には、白木の位牌に記されている戒名をそのまま本位牌に書き写すことになるので、正確に仏壇店に伝えることが重要です。

宗派やお寺によって、使用する文字は異なります。文字入れを依頼する際は、白木の位牌を持参しておくと安心でしょう。持ち歩くことが難しい場合は、白木の位牌の裏表を撮影し、写真を持参してください。

戒名以外の文字(冠字・上文字・置字・梵字)

白木の位牌には、本来の戒名の他に、冠字や上文字、置字、梵字などが書かれている場合があります。

本位牌を作るときは、冠字や上文字、置字、梵字などを省いて戒名だけを位牌に記すのがルールです。ただし真言宗だけは、戒名の上にある「ア字の梵字」と下の「位」を記入して、大日如来の仏弟子となったことをあらわします。

没年月日

没年月日とは、故人が亡くなった年月日のことです。こちらも、白木の位牌に記されているとおりに書き写します。

ただし、白木の位牌に記されている年月日の下に「没」「寂」などの文字が書かれている場合は、省くことが一般的です。

通常、亡くなった日がすぐわかるよう表面に没年月日を入れますが、裏面に入れることもあります。

俗名

俗名は、故人の生前の名前です。位牌の裏面中央に記し、名前の上に「俗名」と記入します。

白木の位牌にしるされている俗名の下に「事」などの文字が書かれている場合は、省くことが一般的です。

行年・享年

行年・享年は、故人が亡くなったときの年齢を指します。満年齢と数え歳のどちらを記しても問題ありませんが、通常は白木の位牌に記入されている年齢をそのまま入れます。

「行年」と「享年」、「才」と「歳」の文字はどちらも同じ意味なので、どちらを記入しても構いません。基本的には、白木の位牌や古い位牌を参考にして決めます。

また、「行年」や「享年」の文字を入れない場合もあります。

生前戒名

現在では亡くなってから戒名が授けられるというのが一般的ですが、本来は生きている間に戒を受け、仏弟子としての生活を送ることが理想です。実際に大半の寺院では、生前に戒名を授けること(生前戒名)を行っています。

生前戒名を授かることで、希望に近い戒名をもらえる、亡くなったあとのご家族の負担を軽減できるというメリットがあります。

生前戒名を授かった方がその戒名を記してつくる位牌を「逆修牌(ぎゃくしゅうはい)」といいます。逆修牌の場合は、戒名の二文字を朱色にするのが通例です。逆修牌に対して、亡くなったあとに戒名を授かる人のためにつくる位牌を「順修牌(じゅんしゅうはい)」といいます。

位牌の戒名入れの手法

位牌に戒名を入れる手法には、「機械彫り」と「手書き」の2種類があります。

機械彫りには、整った文字を入れられるというメリットがあります。文字の色は、裏表面ともに金色です。納期は比較的早く、7日前後となることがほとんどです。特急仕上げが可能な場合もあるので、お急ぎの場合は仏壇店に相談してみてください。

一方で手書きの場合は、味わいのある文字を入れられます。表面は金色で、塗り位牌のみ裏面が朱色になります。手書き文字は漆で書いたあとに乾かす時間が必要なので、納品までに15日ほどかかる点に注意しましょう。

文字入れの手法に関しては、宗派による決まりごとはありません。すでにご自宅に位牌がある場合は、同じ手法で揃えることが多い傾向にあります。

位牌は「故人そのもの」と考えられていますので、丁寧に戒名の文字を入れることが重要です。位牌を購入する際は「文字彫り無料」などの言葉に惑わされず、真心を込めて文字を入れてくれる仏壇店を探しましょう。

戒名のランク

戒名にはランクがあり、それによって御布施の金額も変わってきます。

戒名のランクに関する詳細と、戒名料について詳しくみていきましょう。

戒名のランク付け

戒名は、仏の弟子になったことをあらわす名前です。本来の戒名はどのような身分の人でも二文字で、仏の世界では平等であることを表現しています。

仏教は平等を説く教えですから、戒名にランク付けがあってはなりません。しかし、実際にはランク付けがあり、それによって御布施の金額も異なります。

ランク付けは、院号・院殿号や信士(信女)・居士(大姉)・大居士(清大姉)などの「位号」によって定められています。

現在のような戒名が定着しはじめたのは江戸時代からで、「大名は院殿号」「居士や大姉は下層階級には用いない」のような戒名による身分差別がありました。こうした名残が今の時代にも引き継がれて、「信士→居士→大居士信女→大姉→清大姉」というランクの差、院号・院殿号がつけばさらにランクが上がるというランク付けとなったのです。

戒名のランクは本来、日頃の寺院に対する金銭的なものを含めた功績によって決まるものです。しかし最近は、葬儀で戒名を授けてもらうときの金銭にばかりが注目されています。これは、私たちの普段の生活とお寺とが希薄になってきたことも、ひとつの要因でしょう。

お寺は檀家の経済基盤の上に成り立つもので、檀家の自発的な「布施」行為で維持されます。普段からお寺と良好な関わりがあれば、御布施の金額で嫌な思いをすることは避けられるでしょう。

戒名料

葬儀を取り仕切ってくれた僧侶に支払う金銭のことを、御布施といいます。御布施は読経や戒名に対するお礼で、主な内訳は「お経料」と「戒名料」です。

日本消費者協会の2022年版「葬儀についてのアンケート調査」の寺院費用(御布施)の全国平均は、42万5000円です。宗派や寺院、地域によって異なりますが、戒名ランクによる御布施の一般的金額は、「信士・信女」で20万〜30万円、「居士・大姉」で30万〜50万円、「院号」で50万〜100万円といわれます。

ご遺族のなかには、僧侶から「御布施の金額はお気持ちで結構です」と言われても、いくら納めればよいのかわからずに困ってしまう方もいることでしょう。本来、御布施は金額が決まっているものではなく、ご遺族が支払える範囲で行うものです。

御布施の金額は、お寺との付き合いの程度や、寺院の格、地域などによって異なります。わからない場合は、率直にお寺にお尋ねしても失礼にはあたりません。また、檀家の役員や葬儀社に相談することも可能です。

院号・院殿号

「院号」は、寺院や宗教、社会に大きく貢献した人に授けられる戒名の一番上につけられるものです。

院号は元来、天皇が退位したあとに住んだ屋敷の名前から起こったもので、平安時代に嵯峨天皇が御所を「嵯峨院」と名付けたところから始まったとされます。

院号が戒名の敬称になったのは、一寺院を建立した貴人の敬称に用いたことが起源です。そのため、もともとは生前にお寺を建立する寺院に貢献した人、相当の地位や身分、功績のあった人に授けられていました。

戒名のなかでもっともランクが高いのが、「院殿号」のついたものです。院や殿は、そこに住む高貴な方々の名前で、元来は天皇や位の高い貴族や武士のみに対してつけられていました。足利尊氏が用いたあと、武家や大名に多く用いられたとされています。

有名人・著名人の戒名

故人につけられる戒名は「人柄をあらわす」といわれており、突出した経歴や思想をもった人には、その方ならではの戒名がつけられます。

有名人・著名人の戒名をまとめたので、ぜひそこに込められた意味や由来に思いを巡らせてみてくださいね。

足利尊氏 → 等持院殿仁山妙義大居士
徳川家康 → 東照大権現安国院殿徳蓮社崇誉道和大居士
大石内蔵助 → 忠誠院刃空浄剣居士
近藤勇 → 貫天院殿純忠誠義大居士
福沢諭吉 → 大観院独立自尊居士
夏目漱石 → 文献院古道漱石居士
三島由紀夫 → 彰武院文鑑公威居士
古賀政男 → 大響院釈生楽
石原裕次郎 → 陽光院天真寛裕大居士
樋口一葉 → 知相院釈妙葉信女
美空ひばり → 茲唱院美空日和清大姉
夏目雅子 → 芳蓮院妙優日雅大姉

正しい方法で位牌に戒名を入れましょう

戒名は、故人が迷わず極楽浄土へ行けるように送り出すためにつける、仏の世界における名前です。故人の生前の人柄や功績などをもとにつけられる戒名には、多くの意味や想いが込められています。

故人をあらわす戒名を「故人そのもの」であると考えられる位牌に正しく刻むことで、より故人を身近に感じられるようになるかもしれません。亡くなった方を供養してしっかりと向き合うためにも、戒名の意味や文字の入れ方に関する知識を身につけておきましょう。

東京浅草の仏壇屋 滝田商店では、位牌の購入や文字入れに関するご相談を承っております。ご要望やご不明なことがあれば、お気軽にご相談ください。

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